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【投資戦略ウィークリー 2025年3月31日号(2025年3月28日作成)】”権利付最終前の配当目的の買い、銀行・不動産を巡る新潮流”

 

権利付最終前の配当目的の買い、銀行・不動産を巡る新潮流

  • 日本時間3/27の早朝、米トランプ大統領より米国へ輸入される自動車(完成車)および基幹部品について25%の関税導入が発表された。3/27は3月配当銘柄の権利付き最終日でもあり、配当権利取り目的の買いに支えられて東証株価指数(TOPIX)の終値が前日比プラスだったものの、配当権利落ちの翌3/28は、TOPIX、日経平均株価ともに配当落ち分を大きく上回る下落幅となった。
  • 株主還元強化の時代の要請を背景に上場企業による増配ペースが加速するなか、3月・9月の配当権利付き最終日と権利落ち日を巡って短期的な価格変動性が大きくなる傾向がみられる。指数連動型ETFは、配当落ちに相当する金額を未収金として計上し、指数との連動性を保つため同額の先物を買い建てる。ETFは、株主総会後の配当金受取を経て7月の決算日前に、買い建てていた先物に加え、一部の株式を売却することで決算日に分配金原資を確保する必要がある。ETFの先物買い規模は1兆円超とされ、先回りの現物買いや先物と現物間の裁定取引(アービトラージ)などを通じて日本株市場の攪乱要因となっている。
  • 銘柄によっては、3月は中旬・下旬に向けて、配当権利付き最終日を意識した高配当利回りへの買いが流入しやすい季節性がある。たとえば、予想配当利回り5%を超えるJFEホールディングス5411は、2月末終値に対して3/14終値が2%上昇、3/27終値が5.0%上昇している。それぞれ、値上がり益は半期分の配当金を超える金額となっている。「値上がりしなければ配当権利取り」という選択肢を残しつつ、権利付き最終日前に配当以上の値上がり益を目的として、少し早めの買いを検討する余地もあるだろう。
  • 日本国債10年物利回りが3/27に59%まで上昇するなか、金利上昇が逆風となりやすいはずのJ-REIT(上場不動産投資信託)は、昨年末からの3/27終値までの上昇率が4.7%と堅調だ。また、銀行株の中でも地方銀行は、地方の人口減少に拍車がかかる中で生き残りをかけて経営統合への協議や広域地域連合などの動きを活発化させている。銀行業界にとって、事業全体を対象とする担保制度である「企業担保価値権」が2026年春に創設されることは転機となるだろう。資産の乏しいスタートアップや、経営者保証による事業承継を躊躇している事業者に道を開くものだ。
  • 不動産業界では、アクティビスト(物言う株主)として知られるエリオット・インベストメント・マネジメントが住友不動産8830の株式を取得したことも、日本株市場にとって大きな意味を持ちそうだ。同社は不動産会社の中でも政策株式の保有比率が高く、首都圏を中心に保有する不動産も時価が簿価の約9倍に上る。この不動産時価の対簿価比率は三菱地所8802と同水準だ。(笹木)

本日号は、住友金属鉱山(5713)、安川電機(6506)、ゴールドウイン(8111) 、名古屋鉄道(9048)、テナガ・ナショナル(TNB)を取り上げた。

■主な企業決算の予定   

  • 331日(月):スター・マイカ・ホールディングス、しまむら、象印マホービン、エイチ・アイ・エス
  • 41日(火):オークワ
  • 42日(水): 西松屋チェーン、ナガイレーベン
  • 43日(木):オンワードホールディングス、キユーピー、ワールド、霞ヶ関キャピタル、三協立山、不二越、平和堂、クスリのアオキホールディングス
  • 44日(金):瑞光、マルマエ、あさひ、カネコ種苗、壱番屋、アダストリア、安川電機

 

主要イベントの予定

  • 331日(月)

・財務省2年利付国債入札、ジグザグが東証グロースに新規上場、08:50 百貨店・スーパー売上高(2月)、08:50 鉱工業生産(2月)、08:50 小売売上高(2月)、 14:00 住宅着工戸数・件数(2月)、17:00 日銀4-6月の国債買い入れ予定公表

・ ハノーバーメッセが開幕(ハノーバー、4日まで)、 コロンビア中銀が政策決定会合

・独CPI(3月)、 中国製造業・非製造業PMI(3月)

 

  • 41日(火)

・08:30 失業率・有効求人倍率 (2月)、08:50 日銀短観(3月調査)、09:30 auじぶん銀行日本製造業PMI(3月)

・豪中銀が政策金利発表、ラガルドECB総裁がAI関連会議で開会のあいさつ

・米S&Pグローバル製造業PMI(3月、確報値)、米自動車販売(3月)、米求人件数(2月)、米建設支出(2月)、 米ISM製造業景況指数(3月)、ユーロ圏製造業PMI(3月)、ユーロ圏失業率(2月)、ユーロ圏CPI(3月)、 中国財新製造業PMI(3月)

 

  • 42日(水)

・08:50 マネタリーベース(3月)

・トランプ米大統領が相互関税と追加のセクター別関税を賦課、EU非公式国防相会合(ワルシャワ、3日まで)

・ 米ADP雇用統計(3月)、 米製造業受注(2月)

 

  • 43日(木)

・財務省10年利付国債入札、08:50 対外・対内証券投資(3月 28日)、09:30 auじぶん銀行日本複合・サービス業PMI(3月)

・米ジェファーソンFRB副議長が基調講演、ECB議事要旨(3月開催分)、EU・中央アジアサミット(ウズベキスタン・サマルカンド、4日まで)

・米S&Pグローバルサービス業・総合PMI(3月、確報値)、 米貿易収支(2月)、米新規失業保険申請件数(3月29日終了週)、米ISM非製造業総合景況指数(3月)、ユーロ圏サービス業・総合PMI(3月)、ユーロ圏PPI(2月)、中国財新サービス業・総合PMI(3月)

 

  • 44日(金)

・08:30 家計支出(2月)

・米FRB議長が基調講演、中国・香港市場休場(清明節、中国は6日まで)

・米雇用統計(3月)、独製造業受注(2月)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

米国株「DOGEトレード」を検証する

米国でテスラ(TSLA)CEOでもあるイーロン・マスク氏が率いる政府効率化省(DOGE)が主導する歳出削減方針を巡り、政府機関からの受注が減るとの懸念からコンサルティング企業への売りが目立っている。米連邦政府一般調達局(GSA)は2月下旬、各政府機関に対し大手コンサル10社の契約維持の正当性を証明するよう求める書簡を送った。10社のうち6社は米国上場企業またはその傘下企業だが、ゼネラル・ダイナミクスGDサイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルSAICは株価が相対的に堅調に推移。

マスク氏は有人戦闘機の代替としてドローン利用に前向きなためドローンシステム企業が買われたほか、リストラの矛先が教育省に向くなか、教育関連の規制緩和の思惑から教育関連株も注目されている。

【米国株「DOGEトレード」を検証する~コンサル売り・教育サービス買いは?】

■銅先物価格と25%追加関税

米国政府は3/12から米国が輸入する鉄鋼・アルミ製品に25%の追加関税を課した。2/25には銅への追加関税を検討する大統領令に署名し、実態調査を商務省に指示している。そのような中、同じ銅の国際価格でも、関税リスクを織り込んで米国市場(CMX)での先物価格が英ロンドン市場(LME)に対してプレミアム(割増金)が付くようになった。鉄鋼・アルミ製品と同様に25%だとすれば、3/26終値で16%台に達したプレミアム分の乖離率がさらに拡大する可能性もある。関税を見据えて米国に銅現物が集まる中、米プレミアム上昇に引っ張られて中国でも輸入銅のプレミアムが足元で急伸中だ。

米アリゾナ州のモレンシー銅鉱山の権益を持つ住友金属鉱山5713は米プレミアム上昇の恩恵を受けやすいだろう。

【銅先物価格と25%追加関税~LMECMXの価格乖離率が25%に近付く】

■中国の「氷雪経済」が急拡大

全国人民代表大会(全人代)を受けて、中国共産党および国務院は3/16、「消費振興特別行動計画」を発表。その中で冬季観光やウインタースポーツなど「氷雪消費」の促進が打ち出された。中国では2022年北京冬季オリンピックを機に「ウインタースポーツ人口を3億人に増やす」という目標が掲げられ、2023年には、目標を大幅に超え4億人に達した。

中国ウインタースポーツ市場の成長を取り込むべく、日本のヨネックス(7906)は、2024年9月に上海で開業した世界最大の屋内スキー場でスノーボードショップをオープン。ゴールドウィン(8111)は直営店舗を通じて自社ブランドの普及に努めている。屋内スキー場は通年営業が可能で、関連事業の収益効率が高さいため、業績への貢献が期待される。

【中国の「氷雪経済」が急拡大~日本のスポーツブランドに躍進の可能性】

■銘柄ピックアップ

住友金属鉱山(5713)           

3449  円(3/28終値)  

 

・1590年に住友財閥業祖である蘇我理右衛門が創業した非鉄金属企業。資源開発などの「資源」、金属精錬・加工の「製錬」、電池材料や機能性材料などを含む「材料」の3事業セグメントを営む。

・2/12発表の2025/3期9M(4‐12月)は、売上高が前年同期比9.9%増の1兆1928億円、税引前利益が同44.9%減の481億円。銅と金の平均価格が前年同期比で上昇したこと他により増収。新規開発鉱山立ち上げ堅調も、フィリピンのニッケル精錬子会社の減損損失計上が利益を押し下げた。

・通期会社計画は、売上高が前期比8.8%増の1兆5730億円(従来計画1兆5550億円)へ上方修正の一方、減損損失計上を受けて税引前利益を同39.5%減の580億円(同960億円)へ下方修正。年間配当は株主資本利益率(DOE)1.5%下限配当方針に基づき6円増配の104円(同99円)へ上方修正。同社は米国アリゾナ州モレンシー銅鉱山の権益を保有。トランプ関税が追い風となる面もある。

安川電機(6506               

3963  3/28終値)  

・1915年に安川清三郎と第五郎の兄弟が共同創業。モーションコントロール、ロボット、システムエンジニアリングが主な事業。サーボモーター、インバーターが世界首位。産業用ロボットも首位級。

・1/10発表の2025/2期9M(3-11月)は、売上収益が前年同期比7.2%減の3936億円、営業利益が同26.3%減の343億円。売上比率45%のモーションコントロールは13%減収、営業利益が44%減の159億円。同43%のロボットは自動車向け増加を受けて2%増収も、営業利益が13%減の161億円。

・通期会社計画は、売上収益が前期比4.8%減の5480億円(従来計画5530億円)、営業利益が同12.4%減の580億円(同640億円)、年間配当は同4円増配の68円で従来計画を据え置いた。同社はAI(人工知能)とロボットを融合させた「AIロボティクス」で米エヌビディアNVDAと協業。NVDAのGPUを標準搭載し、AIを活用した産業用ロボット「MOTOMAN NEXT」を競合他社に先駆けて市場投入。

ゴールドウイン8111)             

8418  円(3/28終値)  

        

・1951年に富山県西砺波郡津沢町で津沢メリヤス製造所を設立。スポーツ用品関連として、アウトドア関連ブランド、アスレチック関連ブランド、ウインター関連ブランドのそれぞれの商品を主に扱う。

・2/6発表の2025/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比2.1%増の968億円、営業利益が同11.7%減の169億円。インバウンド需要が高額品や冬物衣料の売上を支えた一方、原材料価格上昇や為替変動および主力商品の販売ピークが後ろ倒しとなったため、粗利益率が1.3ポイント悪化。

・通期会社計画は、売上高が前期比5.0%増の1332億円、営業利益が同24.1%減の181億円、年間普通配当が同12円増配の163円。同社は「ゴールドウイン」ブランドをコアブランドと位置付け、2033年に同ブランドの海外売上高を500億円規模に成長させる「Goldwin 500プロジェクト」を2024年4月に発表。2025年1月に浙江省杭州で中国での4店舗目となる直営店をオープンと中国本土に注力。

名古屋鉄道(9048               

1787.5   3/28終値)  

 

・1921年設立。中部地方を地盤とする私鉄大手で、交通(鉄道・バス・タクシー)事業のほか、運送、不動産、レジャー・サービス(ホテル・明治村他)、流通、航空関連サービスなど各事業を営む。

・2/13発表の2025/3期9M(4-12月)は、営業収益が前年同期比14.5%増の5077億円、営業利益が同29.1%増の388億円。事業別営業収益は、交通事業が同10%増の1207億円、運送事業が同32%増の1401億円、不動産事業が同12%増の813億円、レジャー・サービス事業が同5%増の813億円。

・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比15.6%増の6950億円(従来計画6860億円)、営業利益を同26.6%増の440億円(同410億円)、年間配当を同10円増配の37.5円(同30.0円)とした。3/26終値で市場予想PERが10.0倍、PBRが0.75倍のほか、3/21基準の信用倍率も0.16倍と売り長。同社は3/25、「名古屋駅地区再開発計画」について事業化を決定。名鉄名古屋駅再整備とともに推進。

テナガ・ナショナル(TNB

市場:マレーシア  56 MYR 3/27終値)

・マレーシア最大の電力会社。前身のマレーシア国家電力員会の民営化により1990年に発足。水力発電や火力発電、送電・配電の中核事業をマレーシアで行うほか、インド等海外でも事業を行う。

・3/3発表の2024/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比5.3%増の143.78億MYR、純利益が同63.5%増の9.54億MYR。燃料価格変動で調整される「不均衡コスト・パス・スルー(ICPT)」メカニズム制度の適用もあり堅調に推移。営業費用減少およびデリバティブ巻き戻しも純利益を押し上げた。

・2025年から27年までの3年間はIBR(インセンティブ・ベース収入)の枠組みの下で収入上限(キャップ)に関する規制期間の第4期(RP4)が適用される。キャップ算定の前提としてマレーシア経済の国内総生産(GDP)成長率が4.5-5.5%とされたほか、マレーシア半島部の基本電気料金が25年7月より現行から14.2%値上げされることから、2025/12期の売上高は堅調に推移することが見込まれる。

■アセアン株式ウィークリーストラテジー

3/31号「マレーシアの電気料金」)

マレーシアの電気料金は、①石炭やガスの予想価格や、運営経費、収益率などを勘案しながら3年ごとに見直される「基本料金」、および、②燃料価格の変動に合わせて料金を調整する「不均衡価格転嫁(ICPT)制度」に基づく料金の2つから構成される。

基本料金の算定に関しては、「RP4(規制期間第4期)」の規制対象事業の設備投資額が「RP3(規制期間第3期:2022年-24年)」と比べて約2倍の428億MYR、運営費が同17%増の205億MYRと上昇した一方、収益率は7.3%に据え置かれた。実際の運用では、エネルギー移行・水利転換省(PETRA)により、RP4の基本料金の引き上げが半年間後ろ倒しとなったことに加え、ICPT制度に基づくサーチャージは、2024年7月から続いている据え置き措置が引き続いて実施されることとなった。

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

アセアン・米国株、個別銘柄のリサーチレポート承ります
世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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