今回からボリンジャーバンドを取り上げます。ボリンジャーバンドは投資家の間でも人気のあるテクニカル分析の一つです。おそらく、統計学の標準偏差を使用していることもあり信頼されているものと思われます。そして、オシレーター系のテクニカル分析なのか、それともトレンド系のテクニカ分析なのかと訊かれたら、それは両方の要素を兼ね備えたテクニカル分析です、と答えています。
ただし、ボリンジャーバンドの中身を良く知り正しい使い方をすればよいのですが、間違った使い方をすると、良いテクニカル分析も豹変しますので、このボリンジャーバンド編を読んでよく理解して使用するようにしてください。
上述したように、ボリンジャーバンドには統計学でいう『標準偏差』が使われています。故に、まずは、標準偏差とはどういうものなのか、の理解から確認することにしましょう。もちろん、難しい式をここで取り上げるつもりはありません。簡易な言葉で説明したいと思います。
標準偏差とは「データが平均値からどれくらい散らばっているのか、バラツキの度合いを示す」ものです。
例えば、ある学年(生徒数100人)の英語の平均点が60点だったとしましょう。
生徒は一生懸命に勉強したのですが、問題が難しく多くの生徒が60点前後の点数だったのです。
一方、数学のテストの平均点も60点でした。しかし、勉強した生徒としない生徒の差が激しく、80点以上の点数を取った生徒もかなりいたのですが、逆に40点以下の点数を取った生徒も相当数いたのです。
ここで問題です。英語と数学の平均点は同じ60点ですが、どちらのテストの方が平均点からのバラツキが大きかったでしょうか。
答えは明瞭ですね。数学のテストの方です。
そして、英語のテストと数学のテストの平均点と個々のデータ(各生徒の点数と人数)を図にすると下図のようになります。
英語のテストの方が平均点前後の点数を取った生徒が多く、平均点から離れた点数を取った生徒が少ないことを表しています。
数学のテストは英語のテストと同じ平均点でも、生徒の点数が散らばっているのがわかります。
そして、統計学の手法を使って計算し、標準偏差を求めると、(あくまでも仮の話しですが)英語の標準偏差は10点、数学のテスト30点と計算されたとします。
この計算された標準偏差は1標準偏差と言います。どのように考えるのかと言いますと
平均点に対して±1標準偏差、つまり、英語なら±10点、数学なら±30点の範囲内にデータの68%が入るとされるのです。
この場合、100人の生徒がテストを受けているので、
英語のテストでは68人の生徒が50点から70点の間の点数を取り、数学であれば30点から90点の間の点数を取っていると考えられるのです。
これが2標準偏差になると、つまり、それぞれ平均点から±10点×2と±30点×2の間に95%の生徒が入るとされるのです。
英語のテストで言えば、40点から80点の間に95人の生徒が入っており、計算上40点未満、80点超の生徒は2.5人ずつの生徒しかいないことになるのです。
なお、標準偏差は3標準偏差まで理解しておくとよいでしょう。3標準偏差、つまり平均値から±1標準偏差の3倍の範囲内に98%のデータが入ると言われています。
それでは、この標準偏差をマーケットに応用すると、どういうことが考えられるのでしょうか。
まず、マーケットで平均点(値)と言えば、移動平均が存在します。そして、移動平均線から離れて(バラついて)実際の価格は存在しますので、下図のような捉えることができるのではありませんか。
でも、実際のチャート上では移動平均線は横に書かれますので、下図のようにするとイメージが湧くと思います。
そうなのです、標準偏差を使用することで、移動平均線からのバラツキ度合いを計算することが出来、赤矢印で示した範囲内、すなわち±1標準偏差の68%内に個々の価格が入ると計算されるのです。
これが2標準偏差になると95%の価格、3標準偏差になると98%の範囲内の価格が入ると考えられるのです。
そうなのです。この標準偏差の範囲内を示したのがボリンジャーバンドなのです。
そして、ボリンジャーバンドを実際に表示すると以下のようになります。
上図はドル円の日足に20日の移動平均線と2標準偏差のボリンジャーバンドを載せています。
赤丸で買いシグナルが点灯することで、ストキャスティクスの精度が上がったのがわかります。
ということで、ストキャスティクスにおいては%Kのパラメーターと買われ過ぎ・売られ過ぎのレベルを積極的に変更する方が効果的なのです。
意味するところは赤矢印の範囲内におよそ95%の範囲内のデータが入るとされているのです。
ボリンジャーバンドを理解していただけたでしょうか。
次回は実際の使い方を紹介したいと思います。
川口 一晃(オフィスKAZ代表取締役)
1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問や国内投信会社で11年間ファンドマネージャーを務める。
2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。