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MT5で極めるテクニカル分析

 

<MT5で極めるテクニカル分析~ストキャスティクス③>

前回のコラムでは、ストキャスティクスのパラメーターについて解説しました。教科書では、%Kのパラメーターを『5』にして紹介をしていますが、実際に使用する際には『15から25』の間の数値を使う方が良い、とも記しました。今回は、%Kのパラメーターを『20』に設定して、更に分析効果を高める『スロー・ストキャスティクス』の紹介をしていきます。

 

ダイバージェンス

スロー・ストキャスティクスの紹介をする前に、RSIの項でも説明しました『ダイバージェンス』について触れておきたいと思います。

ダイバージェンスを簡単に説明するのであれば、『価格の動きとテクニカル分析の数値の動きが逆になる』ということです。『価格が下落しているのにも拘らず、テクニカル分析の数値は上昇している』、『価格が上昇しているのにも拘わらず、テクニカル分析の数値は下落している』場合が該当します。

 

上図を見てください。価格は最初の赤丸で下げ止まると思いきや、更に下落して2番目の赤丸まで下落しています。価格水準からは『更に売られ過ぎ状態になった』と判断できます。しかし、青丸で示したストキャスティクスを見てください。最初の赤丸で示した安値に該当するストキャスティクスの数字よりも、2番目の赤丸で示した安値に該当するストキャスティクスの数字の方がわずかながら上昇しているがわかります。この状態がダイバージェンスなのです。こういう状態の時は、テクニカル分析が示した方向に価格が動きやすいとされています。つまり、上昇に転じる確率が高いということになり、実際に反発に転じているのが確認できます。

RSIをはじめストキャスティクスなどのオシレーター系のテクニカル分析は、ダイバージェンスという現象が有効とされていますので、ストキャスティクスを使う時も注意深く観察することをお勧めします。

 

スロー・ストキャスティクス

ストキャスティクスでは、その数値が20%以下の売られ過ぎ状態となった後に反転上昇した箇所をもって、売られ過ぎからの反転とし買いシグナルとしています。逆に、80%以上の買われ過ぎ状態からの反落した箇所をもって、買われ過ぎからの売りシグナルとしています。
でも、それ以外にも有効な売買シグナルがストキャスティクスには存在します。それが『スロー・ストキャスティクス』です。字の如く、ストキャスティクスを更に『スロー』するものです。この場合のスローというのは、より反応をなだらかにして動きを遅くする、ということを意味します。テクニカル分析で動きを遅くする、というのには方法を2つあります。一つはパラメーターの数値を増やすこと、もう一つは移動平均、つまり更に平均させることです。

そうなのです。スロー・ストキャスティクスというのは、ストキャスティクスを更に平均して求めます。教科書ではストキャスティクス、すなわち%Dを更に3日平均して求めます。
ということは、%Kを20日で設定した場合、スロー・ストキャスティクスというのは、%Kを3日平均した%D(ストキャスティクス)を更に3日平均をした数値ということなるのです。
もし、スロー・ストキャスティクスを表示させる際に、%K以外にパラメーターを入力する箇所がない場合には、%Dは%Kの3日平均、スロー・ストキャスティクスは%Dの3日平均と計算しているケースと判断していただいて良いと思います。
でも、MT5では、スロー・ストキャスティクスのパラメーターも変更できるようになっています。以下は、ストキャスティクスの設定画面です。

 

赤い矢印で示した箇所でスロー・ストキャスティクスのパラメーターを入力することができるのです。

 

上図がスロー・ストキャスティクスとストキャスティクスを表示させた図です。青線がストキャスティクス、そのストキャスティクスを更に3日平均してなだらかに表示されている赤線がスロー・ストキャスティクスです。

そして、教科書ではストキャスティクスとスロー・ストキャスティクスのクロスが売買シグナルになるとされています。つまり、ストキャスティクスがスロー・ストキャスティクスを上方から下方へ割り込むクロスが『売りシグナル』、逆に、ストキャスティクスがスロー・ストキャスティクスを下方から上方へ上抜けるクロスが『買いシグナル』とされるのです。
特に、数値が80%以上の買われ過ぎ状態および20%以下の売られ過ぎ状態の時のクロスが有効である、とされています。でも、実際には図に黄色い丸印で示したクロスでも有効である場合が多い、という筆者の経験則も加えておきたいと思います。
つまり、クロスしている箇所というのは、相場の流れが変わる箇所とも符合することが多いというのが、スロー・ストキャスティクスの特徴なのです。

 

執筆者紹介

川口 一晃(オフィスKAZ代表取締役)

1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問や国内投信会社で11年間ファンドマネージャーを務める。
2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。