ストキャスティクスとは終値の水準に着目したオシレーター系のテクニカル分析です。
『%K』と『%D』という記号が出てきます。%Kというのは、任意の期間における終値の水準を百分率で示したものです。そして、その%Kを3日平均した数値が%Dとなり、これが『ストキャスティクス』となるのです。
上図を見てください。ユーロ円の日足とストキャスティクスを表示しています。ストキャスティクスのパラメーターは%Kを教科書通りの『5日間』とし、その数値を3日平均した%Dを載せています。
買われ過ぎ・売られ過ぎをよく表していると思いますが、赤矢印をした部分を見てください。例えば、左側に表示した2つの赤矢印では、%Dが80%台の買われ過ぎ状態となった後に数値が下落し『売りシグナル』が出現しています。しかし、その売りシグナルで売却(売りポジションを取る、ないしは買いポジションの決済)した後も上昇が続いているのがわかります。つまり、シグナル点灯が早かったということになります。
これこそ、オシレーター系のテクニカル分析の弱点である『トレンドに弱い』ということにつながります。
そこで、こうした弱点をカバーするのにどのような工夫が必要なのでしょうか。
筆者は、パラメーターを変えることが一つの解決策だと考えています。現在、投資の世界で使われているテクニカル分析の多くは、外国から輸入されたものです。つまり、日本に輸入される際に翻訳されて出版されているのですが、そこで書かれていたパラメーターの数字が強い影響力を持ち、使われているのです。
したがって、実際のマーケットに適合させていくには、積極的にパラメーターを変えていくことが重要になってくると筆者は考えています。特に、オシレーター系のテクニカル分析には必要なことだと思います。
筆者は、ストキャスティクスに関しては、%Kのパラメーターを『15から25』の間で使用するが良いと考えています。教科書の数字よりも大きな数字を使います。
なお、%Dのパラメーター、『3』という数字は変えません。なぜならば、多くのテクニカル分析のシステムを見てきましたが、%Kのパラメーターを変えられるシステムは多いのですが、%Dのパラメーターが『3』として固定されているシステムが多いからです。
たとえ「%Dのパラメーターを3から5に変えた方がいいですよ」とアドバイスしても、%Dの数字を変えられないのであれば、そのアドバイスも無駄になってしまうからです。であるならば、最初から%Dのパラメーターは『3』を固定させて、%Kのパラメーターを考えた方が良いと考えています。
上図を見てください。MT5では矢印で示した箇所で%Kのパラメーターを変更することが出来ます。また、その下の欄では%Dのパラメーターも変更することは可能になっています。しかし、上述したように、%Dのパラメーターは変更しないで使用します。
故に、下図では%Kのパラメーターだけを『20』に変更したストキャスティクスを表示しました。
%Kのパラメーターが『5』の時よりも%Dはなだらかとなり、利食いが早くなり過ぎるのを回避していることがわかります。
しかし、丸印をした部分を見てください。実は、売られ過ぎの30%以下のラインを下回っていないことから、『買いシグナル』が点灯していないです。つまり、『売りシグナル』は70%を超えているのですが、その前提となる『買いシグナル』がないのです。
そうなのです。パラメーターの数字を大きくし、%Dの数値の動きをなだらかにすることによって、80%と20%と設定してある買われ過ぎ・売られ過ぎの判断レベル、水準に到達しないケースが出てくるのです。よって、買われ過ぎ・売られ過ぎのレベルも変更した方が効果的なのです。
実は、MT5ではこれらのレベルも変更できることができます。
そして、下図は、買われ過ぎ・売られ過ぎのレベルを80から70、20から30に変更したストキャスティクスです。
赤丸で買いシグナルが点灯することで、ストキャスティクスの精度が上がったのがわかります。
ということで、ストキャスティクスにおいては%Kのパラメーターと買われ過ぎ・売られ過ぎのレベルを積極的に変更する方が効果的なのです。
川口 一晃(オフィスKAZ代表取締役)
1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問や国内投信会社で11年間ファンドマネージャーを務める。
2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。