今回はストキャスティクスを紹介します。ストキャスティクスはオシレーター系のテクニカル分析、すなわち、『買われ過ぎ』『売られ過ぎ』を分析します。
以前に紹介しましたテクニカル分析の中にRSIというオシレーター系の分析手法がありました。ストキャスティクスもRSIと同様に買われ過ぎ、売られ過ぎを分析するのですが、その着眼点(考え方)および計算方法は違います。
RSIは、一定期間に動いた値幅の中でどれだけ上昇した部分を占めているか、で買われ過ぎ、売られ過ぎを分析していました。
ところが、ストキャスティクスは終値の水準に着目して、買われ過ぎ、売られ過ぎを判断するのです。
上昇トレンドの続いている状態のローソク足を想像してみてください。価格はどんどん上昇していきます。仮に、1週間(5日間)の個々の終値の水準というのはどのように推移していますか。そうです。上昇トレンドであれば右肩上がりに上昇していますよね。
つまり、上昇トレンドが続いている場合、5日間という期間の値幅を考えると、その終値の水準というのは上方に位置しているのではありませんか。
逆に、5日連続で下落している状態であれば、終値の水準というのは下方に位置していますよね。
上図を見てもわかるように、上昇トレンドが続いているのであれば、終値の水準というのは期間の値幅の上方に位置していることになります。
このように、ストキャスティクスは期間の値幅の中でどの水準に位置しているのかを分析することで買われ過ぎ、売られ過ぎを判断するのです。
そこで、まずは期間の値幅を求めましょう。
これは計算期間のうち、一番の高値から一番の安値を引くことで値幅を求めることが出来ます。例えば、以下のように価格が推移したとしましょう。
ここから5日間の値幅を考えていきます。
となります。
次に、終値の水準を計算してみましょう。終値水準を求めるには、終値から期間中の安値の値段を引くことで求めることが出来ます。
となります。
次に、それぞれの終値の値幅を期間の値幅で割ることで、終値の水準を計算することが出来ます。
となります。
たしかに、5日間で見ると、5日と6日は両日とも高値で取引を終えていますので、終値水準として100%が続き、買われ過ぎ状態となっているのが数字でも理解できます。
そして、7日になると、106円まで下落しているので、100%の買われ過ぎ状態から62.5%に数値が下がっていることにも納得できると思います。
ということで、ここで求めた
を「%K」と呼びます。
ただし、%Kの計算だと数値の乱高下も大きいことから、%Kの平均値を求めます。
その期間は通常3日間が使われます。
そして、この%Dを『ストキャスティクス』と呼ぶのです。
上図で青線で示したのが%D、ストキャスティクスです。この%Dは%Kをパラメーター5日で計算し3日平均したものです。
なお、教科書では、%Kの期間(パラメーター)は『5』となっています。
そして、70%以上を『買われ過ぎ』、故に、70%を超えて買われ過ぎ状態となった後に数値が下落に転じた時に『売りシグナル』、とします。逆に、30%以下の『売られ過ぎ』、故に、30%を割り込んで売られ過ぎ状態となった後に数値が上昇に転じた時を『買いシグナル』とします。
川口 一晃(オフィスKAZ代表取締役)
1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問や国内投信会社で11年間ファンドマネージャーを務める。
2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。