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MT5で極めるテクニカル分析

 

<MT5で極めるテクニカル分析~RSI②>

前回は投資家が抱く『そろそろ』という感覚を数字として捉え、マーケットにおける『買われ過ぎ・売られ過ぎ』を把握する方法として「RSI」を紹介しました。
RSIを言葉で説明すると『ある期間の値動きの中で、上昇した値幅の占める割合』で買われ過ぎ・売られ過ぎを把握します。数字は百分率で表され、70%以上が買われ過ぎ、30%以下が売られ過ぎとなり、その状態より数値が反転した個所が売りシグナル、買いシグナルとなるのです。

また、RSIを開発したワイルダー氏は計算期間を『14日間』として発表しています。故に、テクニカル分析の多くの教科書でも計算期間を14日として記載しています。

パラメーターを考える

 

上図を見てください。上段にはユーロドルの日足のローソク足と下段にはRSI(14日)を表示しています。
価格は上げ下げを繰り返し、投資家として『買われ過ぎ』や『売られ過ぎ』を感じる箇所があるのと同時にその個所に該当する下段のRSIを確認すると星印をつけた箇所を見てもわかるように、RSIの数値が上昇ないし下落しているがわかります。

しかし、上図の中でRSIの数値が70%以上、30%以下になることはなく、教科書でいうところの売買シグナルが発せられていないこともわかります。つまり、RSIを基に教科書通りに売買を行おうとしたのであれば、一度も売買することはなかったことになるのです。
どうしてこのようなことになるのでしょうか。

以前、某雑誌社からRSIについて取材を受けたことがあります。その際、RSIのパラメーターについて、『教科書では、RSIのパラメーターは14日間とされ計算されていますが、14日間だと長すぎてRSIの数値が買いシグナル、売りシグナルの70%以上、30%以下にならないことが多いのです』と説明しました。すると、取材してくれた記者は『そうなのですね。実は自分も投資をしていてRSIを使っているのですが、この1年間の価格自体は動いているのですが、一度も70%以上、30%以下に入ったことがなくて、おかしいなと思っていたところなのです』と言っていました。

 

パラメーターの適正化

次に、下記の表を見てください。

 

これは筆者が昔エクセルで作った『RSIの適正化』というファイルです。価格データを入力して計算させると、RSIを使って売買を繰り返した中で、実現益や勝率の高いパラメーターの日数は何日なのかを計算してくれるものです。

表はユーロドルを計算し、実現益の高い順にベスト10を表示しています。一番実現益の多かったのは3日のRSIで0.06593ドルの利益があったことを示しています。そして、1年間で取引回数は38回発生し、その勝率が57%であったことがわかります。

このファイルを用いていろいろな通貨や株式を計算するのですが、実現益や勝率の上位に14日のパラメーターが来ることはほとんどなく、逆に、10日以下のパラメーターを使用した方が成績の良くなるケースが多いのです。つまり、RSIを使用する際にはパラメーター数値は教科書の14日よりも短い期間を使った方が良いであろう、という結論になるのです。

では、パラメーターを3日にしてユーロドルのRSIを見てみましょう。

 

買われ過ぎからの売りシグナルに赤丸、売られ過ぎからの買いシグナルには青丸を付けてあります。これを見ると頻繁に70%以上、30%以下になっていることがわかります。
もちろん、良いタイミングで売買シグナルが出ている箇所もあれば、タイミングとして首をかしげる箇所もあります。

そうなのです、パラメーターの数値を短くすると、上図のようにRSIの数値は上下に乱高下するようになってしまいます。ということは、すぐに70%を超えて買われ過ぎ、30%を割り込み売られ過ぎ状態になりやすいということでもあります。
そこで、買われ過ぎ・売られ過ぎからの売買シグナルの精度を上げるための工夫の一つとして、買われ過ぎ・売られ過ぎの判断基準、70%や30%の数値を上下させる必要があると考えています。

故に、前出したRSIの最適化の表も買われ過ぎ・売られ過ぎの判断水準を25%以下や15%以下、買われ過ぎの水準を75%や80%以上といったように、判断基準のレベルを上下させて計算しているのです。

表の一番上に記載されている3日のRSIは『15%以下』が売られ過ぎ、『75%以上』が買われ過ぎの水準となり、そこからの反転が売買シグナルになる、ということを表しています。

なお、このようなRSIの適正化といったファイルを使わなくても、RSIを使用する場合には14日ではなく7日から10日あたりのパラメーターから始めた方が良いと個人的には考えています。

 

上図はパラメーターを9日に設定したRSIです。図の中の大きな流れの中で認められる買われ過ぎ、売られ過ぎ状態でRSIの数値が70%以上、30%以下となり売買シグナルが発せられています。

つまり、RSIのパラメーターは教科書よりも期間を短く設定して使うのが効果的だと言えるでしょう。また、RSIを使うのであれば、MT5のようにパラメーターの数値を自分で変更すること出来るシステムを使った方が良いと考えています。

 

執筆者紹介

川口 一晃(オフィスKAZ代表取締役)

1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問や国内投信会社で11年間ファンドマネージャーを務める。
2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。