FXの自動売買(EA)は、インストール・設定・バックテストでは終わりません。実際の相場では、想定外の値動きや技術的なトラブルが発生する可能性があるため、リアルで動かして検証することが大切です。
MT5でEAを動かす前に、多くの人がバックテストを行います。過去のデータでEAのパフォーマンスをチェックするのは、とても重要な作業ですが、リアル運用に入る前にはもう少し準備が必要です。
バックテストとリアルな相場の間には、以下のような違いがあります。
①バックテストでは発生しない現象がある
スリッページ(注文価格と約定価格のズレ)やスプレッド(売値と買値の差)の変動など、リアルな市場では予想外のことが起こります。
②相場は常に変化する
過去のデータでは良い結果が出たEAでも、今の相場にロジックが合っていないと、実力を発揮できません。
③通信環境やサーバーの影響を受ける
これらはバックテストでは検証ができないため、実際の相場で動かしてテストする必要があります。かといって、いきなり資金を投入してEAを動かすのはリスクがあります。
デモ口座でEAを動かしてみることで、実際の相場に近い環境で動作テストを行えます。このような、現在の相場に合わせたテストを「フォワードテスト」といいます。
まずは推奨どおりの設定になっていることを確認して、「エントリーのタイミングが想定どおりかどうか」と、「損切りや利益確定は正しく機能しているか」を確認しましょう。ただし、EAの設定によっては損切りをしないものもあるので、注意が必要です。
また、あまりに短期間ではEAの本当の実力が分からないので、最低でも1か月は動かしてみて、挙動が安定しているかどうかを確認しましょう。
デモトレードでは、リアルトレードで起こるスプレッドの変動やスリッページの発生がないといった違いがありますが、実際の市場に近い状態でEAの動作テストを行えます。その大きな利点は、実際の資金を使わずにトレードできることです。
フィリップ証券のMT5でも、もちろんデモ口座を使ったトレードができます。 デモ口座の申し込みはこちらから→(https://reg.phillip-sec-online.jp/regist-demo)
相場は常に変化するので、順調に動作しているEAがずっと同じパフォーマンスを発揮してくれるとは限りません。特に、重要な経済指標の発表時は注意が必要です。
①急激な相場変動
スプレッドが急に広がり、想定外の損失が出る可能性があります。特に、ポジションを大量に持った状態は要注意です。
②スリッページの発生
スリッページが発生すると、注文が狙った価格で約定しないことがあります。
③エントリーや決済の不具合
市場が荒れると、EAが想定外の動作を起こすケースもあります。
こうしたリスクを避けるために、MT5に搭載されている経済指標カレンダーを活用しましょう。
MT5の下部にあるツールボックスから「指標カレンダー」のタブをクリックすると、経済指標が一覧できます。
デフォルトでは全ての経済指標が表示されています。指標カレンダーの中で右クリックを押してメニューを出しましょう。「優先順位」「通貨」「国」などで、表示する経済指標を絞り込むことができます。
この時「チャートに表示」をオンにすると、チャート上に経済指標の時刻が表示されるようになります。
こうすることで、MT5上でも経済指標を確認することができます。市場の急変動が予測される重要度の高い指標の前後では、EAを一時停止しておくことも視野に入れましょう。
「自動売買」という名前からつい「放置しておけば自動的に稼いでくれる」と考えがちですが、実際には相場の変化に合わせた運用が必要になります。
バックテストだけをあてにせず、本当に使えるかどうかを実際の相場で確認することも大切です。デモ口座でフォワードテストを行えば、資金を投入する前にEAの実際のパフォーマンスをチェックできます。
また、経済指標カレンダーを活用し、相場の急変に慌てることがないよう準備しておきましょう。EAは、上手に使えばとても強力なトレードツールになります。まずはデモ口座でじっくり試しながら、安心して運用できる環境を整えましょう。
FX雑誌『外国為替』の編集長。元FX攻略.com副編集長。
成功しているトレーダーや証券会社への豊富な取材経験を生かし、公正かつ独自性が高い執筆をモットーとしている。
また、個人投資家として、FX、海外株式、先物、暗号資産など、幅広いジャンルへの投資を行っている。