FX取引では外国の指標や指数、または通貨の名称など普段の生活の中ではあまり耳にしないようなワードが多く聞かれます。
そこでこの記事では、FX、MT5関連キーワードを紹介し、内容の理解を深めていただくとともに、お取引に役立てていただけるようまとめています。
この記事から分かること
RMB(人民元)は、中国の通貨の公式名称で、「Renminbi」の略称です。
中国の中央銀行にあたる中国人民銀行が発行する通貨であり、基本単位は「元(Yuan)」です。
RMBは、中国国内での取引や決済に利用されており、中国の経済活動において中心的な役割を担います 。
また、金融取引や国際貿易でも重要な位置を占めている通貨で、国際通貨コードはCNY(Chinese Yuan)と表記します。
中国では、1元、10元、20元、50元、100元の紙幣が流通しています。
1角、2角、5角、5元といった紙幣もありますが、現在は新たに発行されていません。
硬貨には5元、1元、5角、1角があり、10角は1元に相当します。
1角は10分に相当する5分、2分、1分といった硬貨もありますが、近年の物価高の影響で流通していません。
中国には香港、マカオといった特別行政区があります。
これらの地域は「一国二制度」の下で高度な自治が認められており、独自の通貨を使用しています。
香港ではHKD(香港ドル)、マカオではMOP(マカオ・パタカ)が流通しています。
マカオの一部地域では香港ドルも使用可能ですが、中国本土ではRMB(人民元)しか利用できません。
中国ではかつて、固定相場制を採用していましたが、2005年に管理変動相場制(別名:管理フロート制)に移行しました。
管理変動相場制は、政府が為替レートを決める固定相場制と自由な市場取引に任せる変動相場制の中間に位置する制度です。
この制度では、為替相場の上限と下限を設定し、その範囲内で自国通貨の変動を許容します。
中国の場合、前日の終値から上下2%以内の範囲で通貨の変動を許容しています(2024年5月時点)。
固定相場制を廃止し、管理変動相場制を導入した主な理由は、米国からの圧力があったためです。
それまでのRMBは米ドルに対してレートが固定される事実上のドルペッグ制でしたが、米国は「中国がRMBのレートを不当に安く維持し、輸出を促進している」と批判を強めていました。
結果、管理変動相場制の導入により、RMBは徐々に柔軟性を持つようになり、通貨価値の安定を保ちながらも市場の需給に応じて変動するようになっています。
中国政府は、国際取引における米ドルへの依存を減らし、人民元を国際的な通貨として普及させるための取り組みを進めています。
2009年に、中国政府は人民元のクロスボーダー決済を試験的に開始しました。
クロスボーダー決済とは、異なる国や地域間で行われる取引全般を指します。
この取り組みを通じて、中国は貿易取引における人民元の利用を促進し、国際貿易における決済通貨としての役割を強化してきました。
結果、香港やシンガポールなどの主要金融センターで人民元建ての金融商品が増加し、人民元の国際的な利用が広がっています。
2010年には人民元のオフショア市場が形成され、グローバルな金融市場での存在感が高まっています。
2016年には、人民元がIMF(国際通貨基金)の特別引出権の構成通貨に加わり、米ドル、ユーロ、円、ポンドに次ぐ主要国際通貨となりました。
また、中国とヨーロッパなどを結ぶ巨大経済圏構想である「一帯一路構想」を通じて、さらなる人民元の国際化を推進しています。
多国間協力や国際投資において人民元の使用を拡大し、世界経済における人民元の影響力を高めることを目指しているのです。
人民元の将来性は、中国の経済的な影響力の増大とともに注目されています。
現在も推進されている一帯一路構想により、中国は多国間協力やインフラ投資を通じて人民元の使用を拡大しています。
さらに、中国は金融市場の改革を進め、外国投資家の参入を促進しています。
これにより、人民元の取引量が増加し、国際的な流動性が高まると期待されています。
しかし、現時点では人民元が米ドルに代わる基軸通貨になるのは難しいと言われています。
現在、人民元の対ドル許容変動幅は上下2%ですが、2005年に管理変動相場制が導入された時は上下0.3%でした。
許容変動幅の拡大は完全な変動為替制に向かっている段階とも捉えられますが、依然として中国人民銀行による厳しい管理体制にあるのは事実です。
自由な取引を可能にするための規制改革が、今後の人民元の普及に大きな影響を与えるでしょう。
以下では、RMBに関するよくある質問をまとめています。
RMB(人民元)とCNY(中国元)は、中国の通貨を指す用語です。
RMBは「人民元(Renminbi)」の略で、中国の通貨の公式名称です。
一方、CNYは「中国元(Chinese Yuan)」の略称で、通貨コードを指します。
RMBは通貨そのものを広く指し、CNYは国際的な金融取引で使用される標準コードです。
国内での取引では「元」が一般的に使われ、国際的な場面では「CNY」という表記が使われます。
両者は同じ通貨を指しているものの、用途や文脈によって使い分けられます。
RMBとCNYの違いは、基本的に通貨の名前と国際標準コードの違いに過ぎません。
RMB(人民元)とCNH(オフショア人民元)は、中国の通貨を指す用語ですが、使用される市場が異なります。
RMBは、中国国内で使用される通貨全般を指します。
対して、CNHは「オフショア人民元」を意味し、中国本土以外で取引される人民元を指します。
CNHは主に香港市場で取引され、グローバルな金融市場でも使用されます。
CNHは中国本土の金融政策の影響を受けにくいため、より自由な取引が可能です。
一方、国内市場で使用されるRMB(オンショア人民元、CNYとも表記される)は、中国政府の規制の下にあります。
CNHは国際市場での流通を目的とし、RMBは国内市場での使用を目的としています。
同じ通貨であっても、異なる市場動向や規制の影響を受けることになります。
RMBの金利は、PBOC(中国人民銀行)が金融政策を通じて決定します。
中でも中国人民銀行が設定するLPR(最優遇貸出金利)は、事実上の政策金利と位置づけられています。
LPRには1年物と5年超があり、1年物は企業向け融資、5年超は住宅ローン金利に影響します。
また、LPRの基準となるMLF(中期貸出ファシリティ)の金利も毎月公表されており、MLFの金利が下がるとLPRの引き下げが予想されるなど、RMB相場にも大きな影響を与えやすいです。
年月 | 1 年物 | 5 年物 |
---|---|---|
2019年8月 | 4.85% | 4.25% |
2020年2月 | 4.05% | 4.75% |
2020年8月 | 3.85% | 4.65% |
2021年2月 | 3.85% | 4.65% |
2021年8月 | 3.85% | 4.65% |
2022年2月 | 3.70% | 4.60% |
2022年8月 | 3.65% | 4.30% |
2023年2月 | 3.65% | 4.30% |
2023年8月 | 3.45% | 4.20% |
2024年2月 | 3.45% | 3.95% |
2024年5月 | 3.45% | 3.95% |
中国の金利は2019年8月から毎月公表されるLPRが基準となり、市中銀行はこれを参考に金利を設定しています。
2019年8月のLPRは1年物で4.85%、5年超で4.25%でしたが、2024年5月時点では1年物で3.45%、5年超で3.95%と年々下がっています。
これは、中国の経済が貿易摩擦や国内の消費減速により経済成長が鈍化したことが影響しています。
さらに2020年の新型コロナウイルスが中国経済に大きな打撃となり、経済を刺激するために金利が引き下げられました。
現在は不動産市況の低迷により不良債権増加が予想されており、金利の低下が中小金融機関の経営に悪影響を与えることが懸念されています。
RMBは、2024年5月時点で約21円です。
2011年頃は約11円程度でしたが、2015年までは中国経済の好調により20円台まで大きく上昇します。
しかし、2015年以降は経済成長の鈍化により徐々に下落し始め、2019年〜2020年台には15円台まで下落しました。
2020年以降は円安による相対的な人民元高の影響もあり、2024年5月時点では21円台で推移しています。
RMBの円換算レートは、中国人民銀行の中間値と市場の実勢為替レートによって決まります。中間値は政府が設定し、実勢レートは市場で形成される仕組みです。
外国為替市場では常に変動し、為替取引プラットフォームで確認できます。
政策や国際情勢が大きく影響するため、取引時には適切な情報や変動要因の確認が重要です。
2020年のコロナショック以降、世界各国で経済活動の再開が進み、深刻な物価高が問題になっています。
しかし、中国では目立ったインフレになりませんでした。
むしろデフレ圧力の懸念が広がっており、物価は安い状態です。
現在の中国では、経済成長の鈍化や不動産市場の低迷が国民の節約志向につながり、消費が低迷しています。
さらに、国内外の不確実性や貿易摩擦の影響で投資が減少し、現在まで根強いデフレ圧力に見舞われているのです。
物価の変動は地域や商品によって異なるため、最新の情報は中国国家統計局や経済関連の報道機関から確認しましょう。
RMB(人民元)は、中国の経済発展に伴い世界の金融市場を代表する通貨になりました。
将来的には国際通貨として更なる地位向上が期待されている通貨です。
一方で、昨今の不動産市況の悪化や経済成長の鈍化には注視する必要があります。
米国に次ぐ経済大国である中国の動向は、世界の金融市場に影響を与える要因です。
RMBの変動にも大きな影響を与える可能性があるので、常に最新情報をチェックしておきましょう。