エンベロープというのは、移動平均線からどれくらい乖離したかで「買われ過ぎ」「売られ過ぎ」を判断するテクニカル分析です。
例えば、20日の移動平均線に対し、±3%を乖離させた線(エンベロープ)を引くと以下のようになります。
上昇トレンドないしは下落トレンドが続くにしても、移動平均線から未来永劫乖離し続けることは考えにくく、いつかはトレンド転換する動きが出てくるのであれば移動平均線からどれくらい乖離した時に発生すると考えられるのだろうか、という発想に基づいています。
上図は直近4カ月のドル円を表示していますが、きれいにエンベロープの枠の中に値動きが入っていることがわかります。
以前、紹介したボリンジャーバンドに似ているのですが、ボリンジャーバンドは統計学における標準偏差を用いて、上下のラインの中に約95%の確率で入るであろうされるラインを表示します(2標準偏差を使用した場合)。
以下の図は、さきほど表示したエンベロープにボリンジャーバンド(緑線)を重ねて表示したものです。違いが分かると思います。
エンベロープは移動平均線から乖離率が一定であるのに対し、ボリンジャーバンドの方が機動的に幅が変化しているのがわかります。
でも、下図を見てください。
およそ10カ月間のドル円のエンベロープを表示していますが、エンベロープにほぼ到達した(つまり、移動平均線から3%乖離した)場合はそれまで続いていたトレンドが止まっているのがわかります(赤丸)。
10カ月間で3%乖離させたエンベロープに到達する回数は多くないのかもしれませんが、到達した際にはトレンドに影響があると考えてよいのかもしれません。
つまり、ポジションの決済などに利用できる、ということではないでしょうか。
逆に、エンベロープのデメリットを考えてみましょう。
一つは、トレンドに弱い、ということです。これはボリンジャーバンドも同じなのですが、強いトレンドが出ている場合にはエンベロープに張り付いたまま推移することが考えられます(赤矢印)。
つまり、エンベロープに到達したことから、売りポジションを取ったのはいいのですが、その後も上昇が続いてしまうということはあるのです。
また、乖離幅をどれくらいにするのか、というのもちょっと難しい作業になってきます。
通貨によっても1%で良いのか、2%で良いのか、3%で良いのか等々、決めなくてはなりません。また、その時々でマーケットの動きも違ってきます。
そういう意味では、単独でエンベロープを使用するのではなく、他のテクニカル分析と併用する工夫もあると思います。
例えば、前出したボリンジャーバントとの併用です。ボリンジャーバンドがエンベロープと同じくらいの幅の時に価格が到達した場合には決済する、などのルールを作って使用するのも一つのアイデアではないでしょうか。
工夫をして使ってみてください。
川口 一晃(オフィスKAZ代表取締役)
1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問や国内投信会社で11年間ファンドマネージャーを務める。
2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。