ボリンジャーバンドは2つの機能を持ったテクニカル分析です。すなわち、トレンド系とオシレーター系の両方の機能を兼ね備えているのです。
その基本となる考え方は統計学に基づいています。中でも、標準偏差を用いていることから、投資家からの信頼も厚く人気もあるのです。
ところが、ボリンジャーバンドを実践として使う場合に注意が必要な点もあるのです。
今回はボリンジャーバンドを実践で使う場合の注意点について説明したいと思います。
上図はポンド円の日足とボリンジャーバンドです。標準偏差は2σを使っています。
つまり、統計学上、ボリンジャーバンドの枠から外れる確率は5%ということになります。
故に、ボリンジャーバンドをオシレーター系のテクニカル分析として利用する際には、赤い線で示したボリンジャーバンドに接近したら買われ過ぎないしは売られ過ぎと判断します。上下のボリンジャーバンドを超える確率はそれぞれ2.5%しかないのですから。
まず、上図の青矢印で示した部分を見てください。ボリンジャーバンドに到達した後に、買われ過ぎから値を下げているのが確認できます。換言すれば、ボリンジャーバンドのオシレーター系機能が効いている、ということになります。
次に、赤い矢印で示した部分を見てください。
ボリンジャーバンドに到達したにも拘わらず、下げ止まることなく下落が続いています。
先ほどの青矢印で示した箇所で見たようなオシレーター系のテクニカル分析、すなわち、ボリンジャーバンドに到達したら買われ過ぎ・売られ過ぎから、流れが逆になるパターンとは違います。
ボリンジャーバンドの下限に到達したことから、「下げ止まる」と判断して買いポジションを取ったところ、その後も毎日下落が続いたのではたまりません。評価損が拡大してしまいます。
一体、これはどういうことなのでしょうか。
実は、トレンドが出ている時には、ボリンジャーバンドに価格が到達したからといっても動きは止まらないことが多いのです。
日足のボリンジャーバンドであれば、当日の価格データを用いることでボリンジャーバンドの数値、つまり当日の幅が決まります。しかし、これはあくまでも“当日までのデータ”であって、翌日もトレンドが続くのであればそのトレンド方向にボリンジャーバンドの幅は拡大していくのです。上昇トレンドであれば右肩上がりの方向に、下落トレンドであれば右肩下がりの方向にボリンジャーバンドは描き足されていきます。
ということは、買われ過ぎで「売り」だと思っても上昇トレンドが続く時には買われ過ぎ状態が、売られ過ぎで「買い」だと思っても下落トレンドが続く時には売られ過ぎ状態が続くことになるのです。オシレーター系の機能が働かない、ということになります。
しかも、ボリンジャーバンドに到達した動きに対して「トレンドは続く」「トレンドは続かない」とボリンジャーバンドだけを見て判断することは難しい作業と言えるでしょう。
したがって、ボリンジャーバンドを使う時には、トレンド系に強いテクニカル分析を併用した方が良いと考えられます。
では、ボリンジャーバンドはあまり役に立たないのではないか、と思うかもしれません。
でも、ちょっと待ってください。工夫次第ではちゃんと役に立つのです。
上図は前出したポンド円の日足とボリンジャーバンドです。赤矢印の幅は当日のデータ(最新の価格データ)を用いて計算されたボリンジャーバンドの幅で、今日一日はこの幅の中で推移する可能性が95%ということを示してくれています。
あくまでも今日までのデータで今日考えられるボリンジャーバンドの幅です。ということは、その日一日の中でトレードをしようとする投資家に、統計学上考えられるその日一日の値幅を教えてくれる、ということなります。デイトレーダーにとっては、便利な指標となります。
上図はポンド円の週足とボリンジャーバンドです。最新のデータで算出されたボリンジャーバンドの値幅(赤矢印)は、今週一週間、95%の確率で入ると考えられる値幅を示しています。
ということは、想定される週内の値幅を示してくれているのですから、スウィングトレードをする投資家などには役立つ情報と言えると考えられます。
つまり、普段、自分がトレードしている時間スタイル(デイトレーダーやスウィングトレーダー等)の一つ上位の時間単位、一日(デイトレーダー)であれば日足、数日(スウィングトレーダー)であれば週足のボリンジャーバンドを使うことによって、想定される値幅や価格を考えることが出来るのです。
是非、利用してみてください。
ボリンジャーバンドはトレンド系のテクニカル分析とも言われます。
ボリンジャーバンドが狭くなった箇所から、ボリンジャーバンドを超えてくれば『トレンドが出た』と判断します。
ボリンジャーバンドが狭くなるということは、直前まで値動きが小さくもち合いになっていた可能性が高いと考えられます。そのもち合いから大きく値が動くことによってボリンジャーバンドを超えていく、すなわち『新しいトレンドが出た』と判断されるのです。
図に赤い矢印で示した箇所もその一つです。
しかし、実際にボリンジャーバンドの幅が広いか狭いかは表示される期間によっても変わってしまいます。
上図の表示期間を短くすると下図のようになります。赤矢印で示した箇所が上図でボリンジャーバンドの幅が狭いとした箇所と同じ箇所です。
この幅がトレンド発生と認定できる狭い幅なのかどうなのかを判断するのに迷いませんか。
この判断もボリンジャーバンドだけを見ていると難しいと思います。
したがって、ボリンジャーバンドを使用する際には、トレンド系のテクニカル分析との併用をお勧めするのです。
川口 一晃(オフィスKAZ代表取締役)
1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問や国内投信会社で11年間ファンドマネージャーを務める。
2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。