前回のMACD①ではMACDの計算の基本となる『指数平滑移動平均(EMA)』について解説をしました。指数平滑移動平均(EMA)というのは直近の数値に比重をかけた移動平均であり、単純な移動平均よりも早くトレンドの転換を把握できると期待されます。その指数平滑移動平均線(EMA)を使ったテクニカル分析がMACDなのです。なお、MACDの読み方ですが、マーケット内では「マックディー」と読んでいます。「エム・エー・シー・ディー」とは読む人はほとんどいません。まして、「マクド」と読む人はいないと思います。
さて、MACDの基本的な考え方は価格と移動平均線の形状にあると言えるでしょう。
まずは上昇トレンドないしは下落トレンドが続いていると仮定してみてください。その時の価格と長短移動平均線の形状を考えてみましょう。
上昇トレンドの場合、価格の上昇が続きます。上昇が続くのであれば、それにつられて短期の移動平均線も上昇します。長期の移動平均線は短期の移動平均を追いかけるように緩やかに上昇し始めます。特に、上昇トレンドが長く続けば続くほど、価格は上昇しその下方を短期の移動平均線、更にその下方には長期の移動平均線の順番で右肩上がりの形状となります。そして、移動平均線はあくまでも平均値ですので、トレンドが強く価格の上昇が大きく続くと、価格と移動平均線との乖離幅は広がっていくことになります。また、計算期間の違いがあることから、短期と長期の移動平均線の乖離幅も広がっていきます。
上図で示したような形になるのが、トレンド時の典型的な価格と長短両移動平均線の動きです。ここで重要なのは、トレンドが強いのであれば、長短両移動平均線の乖離幅が広がる傾向にある、ということです。
上図を見てください。上昇ないしは下落が続いているところでは、短期の単純移動平均線と長期の単純移動平均線の乖離幅が拡大しているのがわかります。
つまり、トレンドが確認できる場合では短期と長期の移動平均線の乖離幅は広がっていくことが考えられるということです。
しかも、MACDでは、より現在価格の動きを反映させようと、直近の価格に比重がかかる指数平滑移動平均線(EMA)を使用していることから、トレンドの変化の確認なども早く把握できるのではないかと期待できるのです。
上図のように指数平滑移動平均線(EMA)を使った図を見ても、トレンドが出ている時の長短両移動平均線の乖離幅の拡大は確認することができます。
そこで、長短両移動平均線の乖離幅が拡大する時というのはトレンドが出現している時であるというのであれがば、短期の指数平滑移動平均線から長期の指数平滑移動平均線引いた時に
答えがプラスとなりその数が増加している時は上昇トレンド
答えがマイナスとなりその数のマイナス幅が拡大している時は下落トレンドと考えることができるのです。
これが、MACDの考え方なのです 。
MACDをMT5で選択すると、上図のように棒グラフ(青色)が現れます。この大きさが長短両指数平滑移動平均の乖離幅を表しているのです。例えば、一番左の青矢印では下落トレンドが強くなっている様子がわかります。また、一番右の青い矢印では上昇トレンドが出現しているのがわかります。
ちなみに、赤い矢印で示した部分は短期と長期の指数平滑移動平均の値が同じであることからMACDの値が『0』になっている箇所にあたります。グラフ上では黄色い横線で表示してある水準です。そして、その黄色い線よりも棒グラフが上の時にはMACDの値はプラスとなり上昇トレンドを、逆に棒グラフが黄色い線よりも下方にある時には下落トレンドを示しているのです。
この棒グラフがマイナスの箇所からプラスに向かって上昇に転じる箇所、逆にプラスからマイナス方向に減少し始める箇所でトレンドが変わったと判断しトレードを行っても良いのですが、MACD(棒グラフ)の増減が小さく細かい時もあり判断に迷いが生じたりすることがあります。そこで、この棒グラフの数値の平均、すなわちMACDの平均を求める作業が行われます。これをMACDの平均のことを『シグナル』といいます。
下図の下段の赤いラインが棒グラフ、すなわちMACDの平均となります。
そして、MACDの数値が赤いシグナルの線を下方から上方へとクロスする箇所(赤い矢印)を買いシグナル、逆に、MACDがシグナルと上方から下方へ割り込む箇所(黄色い矢印)を売りシグナルとします。
この図を見ても大きな流れは掴んでトレンドを示していると言えるでしょう。
なお、MACDで使用するパラメーターですが、一般的には以下です。
短期の指数平滑移動平均線は12日、長期の指数平滑移動平均線は26日
シグナルの平均は9日平均
川口 一晃(オフィスKAZ代表取締役)
1986 年銀行系証券会社に入社。銀行系投資顧問や国内投信会社で11年間ファンドマネージャーを務める。
2004年10月に独立してオフィスKAZ 代表取締役に就任。