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【投資戦略ウィークリー 2025年1月20日号(2025年1月17日作成)】”国内債券投資の魅力が向上~外国債券からの回帰も”

 

■国内債券投資の魅力が向上~外国債券からの回帰も

  •   日銀による利上げ観測の高まり、米国の利下げ期待を巡る動きを背景とした為替の円高ドル安進展が日経平均株価の上値を重くしている。1/14に日銀の氷見野副総裁が横浜市で講演し、「来週(1/23-24)の金融政策決定会合では利上げを行うかどうか議論し、判断したいと思う。」と述べ、追加の利上げに向けた環境が次第に整いつつあるという認識を示した。続いて植田総裁も1/15、全国地方銀行協会が開いた会合で、同様に金融政策決定会合で「利上げを行うかどうか議論して判断する」と述べた。
  • 総裁の発言を受けて15日の国内債券市場では幅広い年限の国債利回りが上昇した。10年物が255%(2011年4月以来)、2年物が0.700%(2008年10月以来)、5年物が0.890%(2009年4月以来)、20年物が2.015%(11年5月以来)、30年物が2.355%(09年8月以来)の利回りとなった。為替リスクのある外国債券で運用するよりも魅力的な水準まで十分に上昇してきている面もあり、国内機関投資家の債券運用に関して国内債券へ回帰する動きが加速する可能性がある。財務省の対外・対内証券投資によると、銀行は2024年に2兆6500億円の売り越し(2023年に13兆6162億円の買い越し)に転じたほか、生保も1兆6777億円の売り越しだった。
  • 国内債券投資は満期までの保有を前提とすれば額面で償還されることから価格変動リスクを考える必要はないだろう。途中売却を考える場合でも、長期金利と短期金利のスプレッド(格差)が拡がっている場合、債券の残存期間が短くなれば利回りが低下しやすいことから、債券価格が上昇しやすい。これは「ローリング効果」と呼ばれる。残存期間が短くなるほど同じ利回り変化に対する価格感応度は小さくなるものの、日本国債の利回り曲線(横軸が残存期間、縦軸が利回り)が右肩上がりとなり、かつ、短期金利が緩やかな上昇にとどまるならば、中期から長期ゾーンへの国内債券投資がますます有利になると考えられる。国内機関投資家の債券運用が活発になることで銀行や保険会社の運用収益にも好影響が出やすく、銀行株や保険株への追い風にもなるだろう。
  •  任天堂7974が1/16、主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の後継機を2025年に発売すると発表。詳細は4/2配信予定の動画チャンネルで明らかにするとした。ニンテンドースイッチは2017年3月に発売後、シリーズ本体の累計販売台数が1億4604万台(24年9月末)に上った大ヒットゲーム機となった。任天堂のゲーム機への販売比率が高い部品メーカーであるホシデン6804メガチップス6875は、PBR(株価純資産倍率)が8倍近辺と低水準にとどまっている。(笹木)

本日号は、久光製薬(4530)、SMK(6798)、イオンフィナンシャルサービス(8570) 、オリエントコーポレーション(8585)、IHHヘルスケア(IHH)を取り上げた。

■主な企業決算の予定   

  • 121日(火): ブロンコビリー、(米)キャピタル・ワン・ファイナンシャル、ネットフリックス、チャールズ・シュワブ、3M
  • 122日(水):(米)ジョンソン・エンド・ジョンソン、プロクター・アンド・ギャンブル、アボットラボラトリーズ
  • 123日(木): エイトレッド、ディスコ、ニデック、カワチ薬品、光世証券、(米)テキサス・インスツルメンツ、CSX、インテュイティブサージカル、ユニオン・パシフィック、GEエレクトリック
  • 124日(金):オービックビジネスコンサルタント、ブルドックソース、オービック、PLANT、日置電機、東京製鐵、(米)アメリカン・エキスプレス、ベライゾン・コミュニケーションズ、ネクステラ・エナジー

 

主要イベントの予定

  • 120日(月)

・08:50 コア機械受注(11月)、13:30 鉱工業生産・設備稼働率(11月)、13:30 第3次産業活動指数(11月)

・米キング牧師生誕記念日で祝日、株式・債券市場は休場、米大統領就任式、世界経済フォーラム(WEF)年次総会(スイス・ダボス、24日まで)、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ、ブリュッセル)、中国1年・5年物ローンプライムレート(LPR)

 

  • 121日(火)

・ 財務省の40年利付国債入札

・EU財務相理事会(ブリュッセル)

・欧州新車販売台数(12月)、独ZEW期待指数(1月)、英ILO失業率(9-11月)

 

  • 122日(水)

・日銀の国債買い入れオペ、10:00 車の技術展示会「オートモーティブワールド」が開幕(東京ビッグサイト、24日まで)

・ラガルドECB総裁がダボス会議で講演、北朝鮮の最高人民会議(国会に相当)

・米景気先行指数(12月)

 

  • 123日(木)

・日銀金融政策決定会合、月例経済報告(1月)、08:50 貿易収支(12月)、08:50 対外・対内証券投資(1月12-18日)、14:00 首都圏新築分譲マンション(12月)、15:30 GPIFの宮園理事長が年頭会見

・トランプ氏がダボス会議でオンライン形式による演説、トルコ中銀とノルウェー中銀が政策金利を発表

・米新規失業保険申請件数(18日終了週)、ユーロ圏消費者信頼感指数(1月)、韓国GDP(4Q)

 

  • 124日(金)

・日銀金融政策決定会合・終了後に結果と展望リポートを公表(15:30 植田日銀総裁会見)、通常国会召集・政府4演説、08:30 全国CPI(12月)、09:30 auじぶん銀行日本製造業・サービス業・複合PMI(1月)、14:30 東京地区百貨店売上高・全国百貨店売上高(12月)

・ラガルドECB総裁がダボス会議で講演

・S&Pグローバル米製造業・サービス業・総合PMI(1月)、米ミシガン大学消費者マインド指数・速報値(1月)、米中古住宅販売件数(12月)、ユーロ圏製造業・サービス業・総合PMI(1月)

 

  • 126日(日)

・ ベラルーシ大統領選挙

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

米半導体とマグニフィセントセブン

米国上場の主要な半導体関連30銘柄で構成されるSOX(フィラデルフィア半導体)指数は、生成AI(人工知能)人気沸騰を受けて昨年前半に上昇が加速。米国の代表的株価指数のS&P500に対する倍率は昨年7月上旬に、ITバブル時の2000年3月を超えて1.02倍の史上最高水準に達した。また、主要半導体銘柄を含み、金融を除くナスダック上場時価総額上位100銘柄の時価総額加重平均であるナスダック100指数は、米国の景気敏感関連やディフェンシブ関連も含む代表的な30銘柄の平均株価のダウ平均株価に対する比率が昨年末まで上昇継続。12月末に0.50倍と2000年3月を超えて史上最高水準に達した。

半導体銘柄とマグニフィセントセブンへの物色集中の偏りが今後どのように変化していくのかが米国株の鍵を握るだろう。

【米半導体とマグニフィセントセブン~AI相場の中で偏りは維持されるのか?】

 

■米政策金利引き下げによる影響

米FRB(連邦準備制度理事会)が昨年9/18に政策金利を0.50ポイント引き下げた後、それまで低下していた米10年国債利回りは9/17の3.6%割れから反転上昇し、今年1/14に一時4.8%を超えた。消費者物価指数(CPI)上昇率の前年同月比も昨年9月の2.4%まで低下していた中で10月以降に上昇が加速し、1/14発表の12月CPI上昇率は2.9%となった。ドルインデックスも上昇した一方、米ドル相場と逆相関になりやすい金先物価格は上昇一服傾向が見られた。米長期金利上昇が引き続き米ドル買い要因となるのかは今後の焦点だろう。

石油・天然ガスなど化石燃料の開発規制の緩和を目指すトランプ次期政権発足を前にして、原油価格の上昇が加速してきている点が注目される。

【米政策金利引き下げによる影響~長期金利、物価、ドル指数、原油が上昇】

■日経平均株価のBPS、PBR、ROE

日経平均株価採用の225銘柄について1株純資産(BPS)を銘柄毎ウェートで加重平均した価格は1/15終値で2万7073円。日経平均株価終値はその1.42倍の3万8444円。株価純資産倍率(PBR)および株価水準は市場の需給によって変動するのに対し、純資産価格は純利益の最終赤字または自社株買いが無い限りは大幅減益でも減少せずに時間とともに着実な増加が見込まれる。

年間純利益の対純資産比率がROE(株主資本利益率)であり、ROEはPBRをPER(株価収益率)で割った値に等しい。利益水準にかかわらず、自社株買いを通じた純資産の減少によりROEが上昇する場合もPBR上昇をもたらすことが可能だ。自社株買い増加の加速がROEとPBRの推移に変化をもたらす可能性がある。

【日経平均株価のBPSPBRROE~自社株買い増でBPS減とPBRROE上昇も】

■銘柄ピックアップ

久光製薬4530)      

4595  円(1/17終値)   

・1847年に久光仁平が佐賀県(現・鳥栖市)に「小松屋」を創業。医薬品事業を営む。「サロンパス」は80年以上の歴史を誇り世界シェア約7割。経皮薬物送達システムに基づく貼付剤の開発に注力。

・1/9発表の2025/2期9M(3‐11月)は、売上高が前年同期比8.2%増の1112億円、営業利益が同8.0%増の132億円。国内市場は医療用医薬品が減収も、一般用医薬品が「エスカップ」の伸びを受けて堅調。海外市場は医療用医薬品が同26%増収、一般用医薬品が13%増収。業績を牽引した。

・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比8.7%増の1540億円(従来計画1520億円)、営業利益を同36.7%増の180億円(同145億円)とした。国内で経皮吸収型の疼痛治療薬「ジクトルテープ」、海外で「サロンパス」や女性ホルモン製剤などが堅調に推移。継続的な原価低減や返品削減の取組みも奏功。18年6月高値と22年9月安値の各々を起点とする株価の「三角保ち合い」が注目される。

SMK6798    

2775 1/17終値) 

・1925年に池田平四郎が現在の東京都品川区豊町に池田無線電機製作所を創立。電気通信および電気機器等用部品の製造・販売を行う。コネクター等接続部品大手でスマホ向けが柱。

・10/29発表の2025/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比2.3%増の236億円、営業利益が前年同期の▲1.77億円から1.08億円へ黒字転換。売上比率49%のCS(コネクション・システム)事業が同11%増収、同120%営業増益。SCI(センシング・コミュニケーション&インターフェース)事業は4.3%減収、営業赤字拡大。

・通期会社計画は、売上高が前期比3.2%増の480億円(従来計画500億円)へ下方修正の一方、営業利益を前期の▲12.43億円から2億円へ黒字転換(同▲2億円へ赤字幅縮小)への上方修正とした。米ラスベガスで開催されたテクノロジー国際見本市「CES 2025」で、用途が広く身近なコイン電池「CR2032」を代替する、交換不要な自立給電型コインバッテリーモジュールが現地で話題となった。

イオンフィナンシャルサービス8570)         

1212   円(1/17終値) 

・1981年にジャスコ(現イオン8267)の子会社として設立。イオングループの金融サービス事業を営む。国内・リテール、国内・ソリューション、中華圏、メコン圏、マレー圏のセグメントで構成される。

・1/9発表の2025/2期9M(3-11月)は、営業収益が前年同期比9.3%増の3887億円、営業利益が同45.2%増の379億円。セグメント別営業利益では国際部門(中華圏、メコン圏、マレー圏)が同4%減の254億円も、国内部門(リテール、ソリューション)が前年同期▲5.6億円から122億円へ黒字転換。

・通期会社計画は、営業収益が前期比7.1%増の5200億円、営業利益が同9.8%増の550億円、年間配当が同横ばいの53円。同社株式はイオンが48.15%を保有する親子上場となる中で親会社によるTOB(株式公開買付)の可能性が考えられることに加え、1/16終値でPBR(株価純資産倍率)0.56倍、会社予想配配当利回り4.4%とバリュー株として魅力が増している。投資好機の面もあるだろう。

オリエントコーポレーション(8585             

799   1/17終値) 

  

・1954年に設立の「協同組合広島クーポン」が前身。みずほ銀行が48.6%、伊藤忠商事8001が16.5%の株式を保有する。個品割賦、カード・融資、銀行保証、決済・保証、海外の各事業を営む。

・10/31発表の2025/3期1HH(4-9月)は、営業収益が前年同期比10.0%増の1234億円、営業利益が同21.5%増の71.74億円。前期に東京センチュリーとその子会社2社を連結子会社化したことが増収に寄与。連結子会社化による費用増も、コスト抑制および貸倒関係費用の削減が利益面で貢献した。

・通期会社計画を下方修正。営業収益を前期比8.9%増の2495億円(従来計画2630億円)、営業利益を同25.6%減の120億円(同200億円)とした。年間配当は同横ばいの40円で据え置いた。海外子会社および24年3月に連結子会社化したオリコプロダクトファイナンス社の業績下振れによる。1/16終値でPBRが0.58倍、会社予想配当利回りが5.0%。上場維持に向けた流通株式比率引き上げも課題だ。

IHHヘルスケア(IHH)   

市場:マレーシア     7.11  MYR 1/16終値)

・時価総額でアジア最大の民間病院の持株会社。三井物産8031が32.92%を保有する筆頭株主。マレーシア、シンガポール、トルコ、インド、中国ほか11ヵ国15,000超の病床を80の病院で運営。

・11/28発表の2024/12期3Q(7-9月)は、マレーシア会計基準適用によるインフレ調整後の営業収益が前年同期比3.1%減の56.43億MYR、EBITDAが同8.6%減の12.99億MYR。インフレ調整前では営業収益が10.3%増、EBITDAが7.0%増。全ての主要地域セグメントで患者数、1患者当り収入が増加。

・同社は昨年9月、マレーシア北部ペナン州にあるアイランド病院(病床数600)を9.20億USDで買収すると発表。ペナン州はインドネシアからの患者も含め、医療ツーリズムで人気の行き先であり、昨年1-6月に訪れた外国人患者数は前年同期比15%増の21万4100人。アイランド病院はペナン州で2番目に大きい病院であり、マレーシアを訪れる外国人患者のうち3割程度を受け入れている。

■アセアン株式ウィークリーストラテジー

1/20号「三井物産のアセアン・ヘルスケア事業」)

三井物産は生活習慣病が増える東南アジアで予防、治療、在宅ケアまで包括的に提供する体制を整えつつある。同社が筆頭株主となっているマレーシアのIHHヘルスケアは年600万人の外来患者が訪れ、3千万人規模の医療データを持つ。シンガポールでは2022年12月にアクティボラブス、23年9月にミレックサスに出資。アクティボラブスはスマホで得られる運動量などのデータを使い、医学・統計学を生かした「健康スコア」を算出。ミレックサスは世界で初めてがん細胞が血液中に放出する物質「マイクロRNA」を利用した胃がんの検出技術を商用化した。ミレックサスの技術はPCR検査機器で1回当たり80-100ドル程度と利用しやすいことから注目されている。IHHグループ病院内でもミレックサスの検査キットはシンガポールで活用され、他の国での認可の取得や活用を目指しているところだ。

 

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

アセアン・米国株、個別銘柄のリサーチレポート承ります
世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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